第80回-ふたりになった孫

2020-06-11 17:21:11 451
声音简介

むかしむかし、ある村に、おじいさんとおばあさんが住んでいました。 おじいさんとおばあさんには、一人の可愛い孫がいます。 


ところが家が貧乏なので、孫を二里(八キロメートル)ほどはなれた漁師の網元(あみもと→多くの漁師をやとっている、漁師の親方)の家へ奉公(ほうこう→住み込みで働くこと)に出すことになりました。 


しかし孫は、奉公に行ったその晩に帰って来て、「じいさま、おばあさん。 おら、網元の家じゃあ、骨がおれてどうにもなんねえ。 おら、あそこへ奉公するのはいやだ」と、言うのです。



おじいさんとおばあさんは、すっかり困って言いました。「これ。ただこねるもんでねえ」「そうだ。何とかしんぼうして、がんばってくれ」 そしてせんべいを食べさせたり、おみやげ持たせたりして、やっと帰したのですが、あくる日の晩になると、また戻ってきたのです。 


こうして孫は毎晩毎晩帰ってきては、おいしい物を食べて、おみやげを持って帰っていったのです。 ある日の事。 孫が休みをもらったと言って、珍しく昼間に現れました。 そこでおばあさんは、孫に注意をしました。


「なあ、お前。 そんなに家に帰ってばかりしては、網元さまに良く思われんよ。 つらいだろうが、もっとしんぼうせにゃ」 すると孫は、不思議そうな顔をして言いました。


「じいさま、ばあさま。 おら、網元さんに奉公してから、今日、初めて家に帰ってきたんだよ」「初めて? 何を言う。お前は毎晩の様に、帰ってくるでねえか」「そうだ。そしてごちそうたらふく食べて、みやげまで持って帰るでねえか」 おじいさんとおばあさんの言葉に、孫はびっくりです。


「いんや、いんや、おら、帰って来るのは、今日が初めてだ」「???」 孫がうそを言う子どもでないことは、おじいさんもおばあさんもよく知っています。 おじいさんもおばあさんも孫も、不思議そうに首をかしげました。 


その夜、誰かが家の戸を叩きました。 おじいさんが戸口に行くと、「おらだ。今帰ったぞ」と、いつもの孫の声がします。 おじいさんがびっくりして家の中を見ると、孫はおばあさんと話しをしています。「こりゃ、たまげた。孫が二人になったぞ。どっちが孫が、本物じゃろか?」 


おじいさんは、ふと考えました。(そう言えば、夜に来る孫は、すこしおかしなところがあった。すると外にいる孫は、化け物かもしれんぞ) おじいさんは、そばにあった天びん棒(てんびんぼう→両端に荷物を引っかけて使う、荷物もちの棒)を持って、用心しながら戸を開けました。 


すると外の孫は、びっくりして言いました。「じいさま、じいさま。おらは、お前の孫だぞ。そないな物を持って、どうするんじゃ」「やかましい! わしの可愛い孫は昼間に来て、奥でばあさまと話をしとるわい!」 おじいさんが怒鳴ると、今まで孫の姿をしていたものがクルリととんぼ返りをして、一匹のタヌキになりました。 





そして手を合わせて、「じいさまや。かんにん、かんにん」と、あやまるのです。 その様子を見たおじいさんは、すっかりタヌキの孫も可愛くなって、「よしよし。せっかく来たんじゃから、あがっていけ。ごちそうもあるから、たんと食べて行けや」「ありがとう」 タヌキは礼を言うと、またクルリととんぼ返りをして孫の姿になりました。 


そして、おじいさんとおばあさんと本当の孫とタヌキの孫は、みんな仲良く晩ご飯を食べたのでした。



おしまい















用户评论

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刘静華

沙耶的声音真好听!

胖太郎Pan 回复 @刘静華

代替沙耶さん谢谢你!