第二話 02:00—07:50
凛:それじゃ話を始めるけど、自分がどんな立場にあるのか、わかってないでしょ。
衛宮:うん…
凛:率直に言うと、衛宮くんはマスターに選ばれたの。体のどっかに聖痕が刻まれてない?
衛宮:聖痕?
セイバー:令呪のことです。士郎。
衛宮:あっ、ああ!これか。
凛:そう。それがマスターとしての証よ。そしてサーヴァントを律する呪文でもある。だから、それがある限りはサーヴァントを従えていられるの。
衛宮:ある限りってどういうことだよ…
凛:令呪は絶対命令権なの。サーヴァントの意思を捻じ曲げてでも、言いつけを守らせる呪文が、その刻印。ほら、さっきだってセイバーは攻撃をやめたでしょう?ただし、絶対命令権は三回のみだから。無駄遣いはしないようにね。その令呪がなくなったら、衛宮くんは殺されるだろうからせいぜい注意して。
衛宮:殺される?
凛:そうよ。マスターが他のマスターを倒すのが聖杯戦争の基本だもの。そうして他の六人を倒したマスターには望みを叶える聖杯が与えられるの。
衛宮:ちょ、ちょっと待ってくれ。聖杯ってなんだよ。
凛:要するに、あなたはある儀式に巻き込まれたの。聖杯戦争っていう七人のマスターによる、魔術師同士の殺し合いに。
衛宮:いきなり何言ってんだ!お前。
凛:私は事実を口にするだけよ。それに、あなただって本当は理解してるんじゃない?一度ならず二度までも、サーヴァントに殺されかけたんだから。納得した?私もマスターに選ばれた一人。そのサーヴァントは聖杯戦争を勝ち残るために、聖杯が与えた使い魔と考えなさい。
衛宮:使い魔になんて見えないけど…
凛:そりゃそうよ。使い魔の分類ではあるけど、人間以上の存在。過去の英雄なんだから。
衛宮:過去の英雄?セイバーが?
凛:そうよ。過去だろうが現代だろうが、伝説上の英雄を引っ張ってきて、実体化させたものがサーヴァント。呼び出すのがマスターの役割。あとの実体化は聖杯による現象ね。サーヴァントは、基本霊体としてそばにいるけど、必要とあらば、実体化させて戦わせられるってわけ。
衛宮:霊体と実体を使い分けられるってことか。あの赤い奴…
凛:アーチャーよ。今は外を見張らせているわ。ここまでは理解できた?
衛宮:言葉の上でなら…
凛:もっと詳しい話は、聖杯戦争を監督している奴に聞きなさい。私が教えてあげられるのはね、あなたはもう戦うしかなくて、サーヴァントは、強力な使い魔だから、うまく使えってことだけよ。さて、衛宮くんから話を聞いた限りじゃ、あなたは不完全な状態みたいね、セイバー。
セイバー:ええ、あなたの言う通り、私は万全ではありません。士郎はマスターとして成立していないので、魔力の回復も難しいでしょう。
凛:驚いたわ。
衛宮:おい、何の話をしているんだ、遠坂。
凛:サーヴァントはね、マスターからの魔力の供給を受けることで、存在していられるの。だけど、半人前の衛宮くんからは魔力の提供を受けられないから、この先困るってこと。お、衛宮くんも飲む?
衛宮:いい…
凛:でも、あなたが正直に話してくれるなんて思わなかった。
セイバー:見抜かれている以上、こちらの手札を隠しても、意味はないでしょう。それならば、あなたという敵に知ってもらうことで、士郎に現状を、より深く理解してもらった方がいい。
凛:風格も十分とは…ああー!もう!ますます惜しい!私がセイバーのマスターだったら、こんな戦い勝ったも同然だったのに!
衛宮:それ、俺がふさわしくないってことか?
凛:当然でしょ?へっぽこ!
衛宮:はぁ?
凛:さて、そろそろ行きましょうか。
衛宮:行くってどこへ?
凛:だから、聖杯戦争をよく知ってる奴に会いに行くの。衛宮くん、聖杯戦争の理由について知りたいんでしょ?
衛宮:それは当然だ。だけど、もうこんな時間だぞ。
凛:なに。行かないの?まぁ、衛宮くんがそう言うんならいいけど。セイバーは?
衛宮:セイバーは関係ないだろう!あんまり無理強いするな。
凛:おっ!マスターとしての自覚はあるんだ。私がセイバーと話すのは嫌?
衛宮:そ、そんなことあるか!くそ、アイツの性格どこか問題がある気がしてきたぞ。そもそも、セイバーは昔の英雄なんだろ?なら、突然現代じゃあ右も左もわからないだろうし。
セイバー:士郎。それは違う。サーヴァントはあらゆる時代に適応します。ですから、この時代のこともよく知っている。
衛宮:知ってるって本当に?
セイバー:もちろん。この時代に呼び出されたのも一度ではありませんから。
凛:嘘!どんな確率よ、それ。
セイバー:それで、どこに向かうのですか?
凛:新都にある教会よ。
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