20 第二十篇

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　北からは雪の便りが届いて、今日は立冬。季節の巡りは順調らしく、近所の雑木林は緑はだいぶ色あせた。通り雨がぱらぱらと枯れ葉を鳴らすような日には、暖かいカップを両手でそっと包むのが「心」にはいいようである。 　「寒いね」と話しかければ、「寒いね」と答える人もいる暖かさ。という歌が俵万智さんにあった。白い息に手を擦り合わせる二人が浮かぶ。「寒いね」の会話もいま、北から南へと、急ぎ足で列島下っているのに違いない。

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その「手と心」の関係について、米国から愉快なニュースが届いた。手が温まっている人は、冷えている人に比べて、他人に対して優しくなるそうだ。大学の研究グループが実験結果を発表した。 　たとえばホットコーヒーのカップを持った人は、アイスの人より他人を好意的に評価する傾向が見られたという。温湿布と冷湿布も似た傾向が現れた。やはり手の奥には心が控えているのか。手の温もりは無意識のうちに心に結びつくらしい。

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東京にある日本民藝館をつくった柳宗悦は、身の回りで使われている陶器や木工品など、日常の道具に美しさを見出した人だ。それら民衆工芸の美しさは、人の手で作られたからこそだと『手仕事の日本』に書いている。 　手が機械と違うのは、心とつながっているからだと柳はいう。「手はただ動くのではなく、いつも奥に心が控えていて・・・働きに喜びを与えたり、また道徳を守らせたりする」。手仕事とは心の仕事に他ならないと、名高いめ目利きは唱えている。