日语朗读-だれかのまなざし旁白

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だれかのまなざし

野村不動産 絵コンテ&演出:新海誠

吊り革をまるで命網みたいに強く握って

あーちゃんが立っている

誰かの自慢めいた近況をチェックする気にもなれず

かといて窓ガラスに映った疲れた自分を見るのも嫌いで

あーちゃんは じっと目を瞑っている

力を入れすぎて真っ赤になった右手を左手に変え

また右手に持ち替えて

そのうち 両手で吊り革を握る

あーちゃんの降りる駅は まだまだ遠い


何をしていても 何を見ても

あなたはいつも嬉しそうにしている女の子だった

走ること 食べること 喋るとと 歌うこと

全部喜びに溢れていた

だんだんお母さんの仕事が忙しくなって

お父さんと二人だけで過ごすことが多くなった

寂しそうなあなたのために

お父さんがミーさんを連れてきたのはその頃

二人はすぐに親友に

やがて制服を着る年齢になって

だんだん 喜びの多くは家族の外から

やって来るようになった

父の存在は次第に小さくなり

ついにはその平凡さを

あなたは軽蔑すらしてしまうようになる

お父さんにとってはそれさえも

娘の成長として喜ぶではあったけれど

でも同時に どれほどの寂しさを父に与えたか

あなたは想像もしない

就職をきっかけに家を出て

念願のひとり暮らしをあなたは始め

そして今 一人でやっていくのだと

あなたは必死だ

私はもうずいぶんおばあちゃんになってしまったけれど

そういうあなたたちの時間すべて覚えている

叶うことならば

最後にもう一度だけ

あなたに会いたかったのだけれど


あなたたちが忘れてしまったことはたくさんある

お父さんが「あーちゃんを守らなきゃ」って

誓ったあの日

アーちゃんはこう決心したの

「私はお父さんを守らなきゃ」って

友達と親の悪口で盛り上がちゃた日の夜

罪悪感で初めてお父さんに夕食を作ってあげた

あなたの一人暮らしの最初の夜

お互いに寂しさに

少しだけ泣いたこと

仕事で近くの駅にいると娘を誘った時

本当はお父さんは豪華なお弁当を二つ買って

アパートの側から電話していたこと

それでも 幸せはきちんと続いていくと

あなたたちはもう 知っている 



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