木の花

听友95562495

強いてよく見ると、花びらの端に趣のある色が、ほんのりとついているようだ。『長恨歌』の中で楊貴妃が、玄宗皇帝のお使いにあって泣いたという顔を形容して、「梨の花一枝春雨を帯びたり」などと言っているのは、この花を賞美することが、並々のことではないのだろうと思うと、やはり梨の花のたいそうすばらしいことは、ほかに比べるものがあるまいと思われた。

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梨の花は、たいそう面白みのないものとして、身近にもてはやすこともせず、ちょっとした手紙をそれに結びっけなどさえもしない。可愛げのない女の子の顔などを見ては、梨の花のようだと譬えにして言うのも、なるほどそのとおりで、葉の色からはじめて、つまらなく見えるのだが、しかし、唐土では、この花をこの上ないものとして詩にも読んでいる。

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木の花（現代語訳）　　 清少納言　　　　　　木の花は、色の濃いのでも、薄いのでも紅梅がよい。桜は花びらが大きくて、色のよいのが、枝は細く咲いているのが面白い。藤の花は、花房が長く垂れ下がって、色濃く咲いているのが、たいそうよい。卯の花は、品格が劣って、何ということはないけれど、咲く季節が面白く、郭公が花の陰に隠れているだろう。４月の月末か、５月の初めごろに、橘の葉が濃く青いところの、花がたいそう白く咲いているのが、夜のうちに雨の少し降ったその早朝などには、この上もなく趣のある様子で面白い。