注文の多い料理店
宮沢賢治
二人の若い紳士が、すっかりイギリスの兵隊のかたちをして、ぴかぴかする鉄砲をかついで、白熊のような犬を二疋つれて、だいぶ山奥の、木の葉のかさかさしたとこを、こんなことを云いながら、あるいておりました。
两个年轻的绅士,俨然是一副英国士兵的装扮,肩上扛着锃亮锃亮的步枪,牵着两条像白熊一样的大狗,沙沙地踏着深山里的落叶,一边走,一边这样聊着:
「ぜんたい、ここらの山は怪しからんね。鳥も獣も一疋も居やがらん。なんでも構わないから、早くタンタアーンと、やって見たいもんだなあ。」
“这一带的山可真是够戗,连一只鸟、一头兽也没有。管它是什么东西呢,真想快点儿砰砰地放它几枪过过瘾。”
「鹿の黄いろな横っ腹なんぞに、二三発お見舞もうしたら、ずいぶん痛快だろうねえ。くるくるまわって、それからどたっと倒れるだろうねえ。」
“如果能在鹿的黄肚皮上来它两三枪,那才叫痛快呢!它肯定会骨碌碌连转几个圈,然后扑通一声栽倒在地。”
それはだいぶの山奥でした。案内してきた専門の鉄砲打ちも、ちょっとまごついて、どこかへ行ってしまったくらいの山奥でした。
这里已经是相当深的山里了。就连给他们带路的当地的猎手,也迷路了,不知跑到哪里去了。
それに、あんまり山が物凄いので、その白熊のような犬が、二疋いっしょにめまいを起こして、しばらく吠(うな)って、それから泡を吐いて死んでしまいました。
加上这里山势险峻,两条大白熊一般的狗竟不约而同地昏倒在地,哼哼了几声,就口吐白沫地死了。
「じつにぼくは、二千四百円の損害だ」と一人の紳士が、その犬の眼ぶたを、ちょっとかえしてみて言いました。
一个绅士走过去翻了翻狗的眼皮,说:“这下我损失了两千四百元。”
「ぼくは二千八百円の損害だ。」と、もひとりが、くやしそうに、あたまをまげて言いました。
另一个绅士惋惜地歪着头说:“我损失了两千八百元呢。”
はじめの紳士は、すこし顔いろを悪くして、じっと、もひとりの紳士の、顔つきを見ながら云いました。
先开口的那个绅士脸一沉,盯着另一个绅士的脸说:
「ぼくはもう戻ろうとおもう。」
“我想回去了。”
「さあ、ぼくもちょうど寒くはなったし腹は空いてきたし戻ろうとおもう。」
“好呀,我也觉得又冷又饿,正想回去呢。”
「そいじゃ、これで切りあげよう。なあに戻りに、昨日の宿屋で、山鳥を拾円も買って帰ればいい。」
“那么,我们就回去吧。路上,可以在昨天的那家旅馆里,花上十元钱买些山鸟带回去。”
「兎もでていたねえ。そうすれば結局おんなじこった。では帰ろうじゃないか」
“还有兔子呢。反正还不都是一回事,那么,就往回走吧!”
ところがどうも困ったことは、どっちへ行けば戻れるのか、いっこうに見当がつかなくなっていました。
可糟糕的是,他们根本就不知道该往哪个方向走了。
風がどうと吹いてきて、草はざわざわ、木の葉はかさかさ、木はごとんごとんと鳴りました。
风一下子刮了起来,草沙沙作响,树叶哗哗啦啦,树发出了咔咔的响声。
「どうも腹が空いた。さっきから横っ腹が痛くてたまらないんだ。」
“我可能真是饿了。肚子侧面从刚才开始疼得受不了。”
「ぼくもそうだ。もうあんまりあるきたくないな。」
“我也是一样,一步也懒得走了。”
「あるきたくないよ。ああ困ったなあ、何かたべたいなあ。」
走不动了。唉,这可怎么办呀。真想吃点东西。”
「喰べたいもんだなあ」
“好饿啊!”
二人の紳士は、ざわざわ鳴るすすきの中で、こんなことを云いました。
两个绅士踩着沙沙作响的芒草,边走边这样说着。
その時ふとうしろを見ますと、立派な一軒の西洋造りの家がありました。
就在这时候,他们无意中一回头,发现了一幢别致漂亮的洋房。
そして玄関には
门口挂着一块牌子:
RESTAURANT
西洋料理店
WILDCAT HOUSE
山猫軒
という札(ふだ)がでていました。
「君、ちょうどいい。ここはこれでなかなか開(ひら)けてるんだ。入ろうじゃないか」
“你看,正好。这里还挺开化的,进去看看吧。”
「おや、こんなとこにおかしいね。しかしとにかく何か食事ができるんだろう」
可是奇怪,这种地方怎么会有⋯⋯不过,不管怎么说,总会有东西吃吧。”
「もちろんできるさ。看板にそう書いてあるじゃないか」
“当然有了。招牌上不是这样写着的嘛。”
「はいろうじゃないか。ぼくはもう何か喰べたくて倒れそうなんだ。」
“那就进去吧。我简直要饿昏过去了。”
二人は玄関に立ちました。玄関は白い瀬戸の煉瓦で組んで、実に立派なもんです。
两人在大门口站住了。只见正门是用白色的瓷砖砌成的,相当漂亮。
そして硝子の開き戸がたって、そこに金文字でこう書いてありました。
随后是一扇玻璃拉门,门上写着几个烫金的字:
「どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません」
任何人都不必客气,请随便进。
二人はそこで、ひどくよろこんで言いました。
这下可把他们俩乐坏了。
「こいつはどうだ、やっぱり世の中はうまくできてるねえ、きょう一日なんぎしたけれど、こんどはこんないいこともある。このうちは料理店だけれどもただでご馳走するんだぜ。」
“你看怎么样,真是天无绝人之路啊,今天我们吃了一天的苦头,但最后还是碰到了这样的好运。这里虽说是一家餐馆,但是可以白吃一顿。”
「どうもそうらしい。決してご遠慮はありませんというのはその意味だ。」“看样子没错。‘不必客气’大概就是这个意思。”
二人は戸を押して、なかへ入りました。そこはすぐ廊下になっていました。その硝子(がらす)戸(ど)の裏側には、金文字でこうなっていました。
两个人推门而入,一进门是一条走廊,玻璃门的背后又是烫金的字,这样写道:
「ことに肥ったお方や若いお方は、大歓迎いたします」
特别欢迎胖客人和年轻的客人光临。
二人は大歓迎というので、もう大よろこびです。
两个人一见到“特别欢迎”的字样,更加高兴了。
「君、ぼくらは大歓迎にあたっているのだ。」
“喂,我们是特别受欢迎的人呀。”
「ぼくらは両方兼ねてるから」
“我们可是二者兼顾啊。”
ずんずん廊下を進んで行きますと、こんどは水いろのペンキ塗りの扉がありました。
顺着走廊一直往里边走,又出现了一扇涂着淡蓝色油漆的门。
「どうも変な家だ。どうしてこんなにたくさん戸があるのだろう。」
“这房子好奇怪呀!怎么会有这么多扇门?”
「これはロシア式だ。寒いとこや山の中はみんなこうさ。」
“这是俄罗斯式建筑。寒冷地区和山里面的房子都是这个样子。”
そして二人はその扉をあけようとしますと、上に黄いろな字でこう書いてありました。
当他们俩正想推开那扇门时,发现门上写着几个黄字:
「当軒は注文の多い料理店ですからどうかそこはご承知ください」
本轩是家订单很多的餐馆,这点还请各位多多包涵。
「なかなかはやってるんだ。こんな山の中で。」
还挺受欢迎的呀,在这样的深山里真是罕见。
「それあそうだ。見たまえ、東京の大きな料理屋だって大通りにはすくないだろう」
“这也没有什么奇怪的。东京的一些大餐馆,有几家是开在大街上的呀?”
二人は云いながら、その扉(と)をあけました。するとその裏側に、
两个人边说边推开了那扇门,只见门背面又写着:
「注文はずいぶん多いでしょうがどうか一々こらえて下さい。」
要求是多了一点,请各位忍耐一下。
「これはぜんたいどういうんだ。」ひとりの紳士は顔をしかめました。
一个绅士皱了一下眉头:“这到底是怎么回事呀?”
「うん、これはきっと注文があまり多くて支度が手間取るけれどもごめん下さいと斯ういうことだ。」
“嗯,一定是点菜的客人太多了,要花些时间,请客人原谅的意思吧!”
「そうだろう。早くどこか室の中にはいりたいもんだな。」
“说得对。咱们还是快点进到房间里边去吧。”
「そしてテーブルに座りたいもんだな。」
“真想快点坐下。”
ところがどうもうるさいことは、また扉が一つありました。そしてそのわきに鏡がかかって、その下には長い柄のついたブラシが置いてあったのです。
可是烦人的是,眼前又出现了一扇门。门旁边有一面镜子,镜子下边放着一把长柄刷子。
扉には赤い字で、
门上用红字写道:
「お客さまがた、ここで髪をきちんとして、それからはきもの
の泥を落してください。」
と書いてありました。
各位顾客:请在此将你的头发梳理整齐,并把鞋上的泥土刷掉。
「これはどうも尤もだ。僕もさっき玄関で、山のなかだとおもって見くびったんだよ」
“这倒也合乎情理。刚才在门口,我还真有点儿小瞧了山里的餐馆。”
「作法の厳しい家だ。きっとよほど偉い人たちが、たびたび来るんだ。」
“看样子是家讲究礼节的餐馆。肯定是经常有大人物光顾。”
そこで二人は、きれいに髪をけずって、靴の泥を落しました。
于是,两人把头发梳理整齐,又将鞋子上的泥土刷掉。
そしたら、どうです。ブラシを板の上に置くや否や、そいつがぼうっとかすんで無くなって、風がどうっと室の中に入ってきました。
可谁知道,就在他们刚想把刷子放回板上的时候,刷子却忽然变成透明的,不见了,随后一阵风刮了进来。
二人はびっくりして、互によりそって、扉をがたんと開けて、次の室へ入って行きました。早く何か暖いものでもたべて、元気をつけて置かないと、もう途方もないことになってしまうと、二人とも思ったのでした。
两个人不禁同时打了一个寒战,互相挤到了一起,手忙脚乱地哐当一声打开了房门,走进里间。两个人只是想快吃点热乎乎的东西,恢复一下体力,不然后果不堪设想。
扉の内側に、また変なことが書いてありました。
门的内侧又出现了几个莫名其妙的字:
「鉄砲と弾(た)丸(ま)をここへ置いてください。」
请把枪支和弹药放在这里。
見るとすぐ横に黒い台がありました。
一看,就在边上有一个黑色的台子。
「なるほど、鉄砲を持ってものを食うという法はない。」
“说的也是,岂能带着枪吃饭呢。”
「いや、よほど偉いひとが始終(しじゅう)来ているんだ。」
“一定是有什么了不起的大人物经常光顾。”
二人は鉄砲をはずし、帯皮(おびかわ)を解いて、それを台の上に置きました。
两个人卸下了枪,解下了子弹带,放到了台子上面。
また黒い扉がありました。
又出现了一扇黑门。
「どうか帽子と外套と靴をおとり下さい。」
请摘下帽子、脱掉外套和鞋子。
「どうだ、とるか。」
“怎么办,要不要脱?”
「仕方ない、とろう。たしかによっぽどえらいひとなんだ。奥に来ているのは」
“有什么办法,脱吧。一定是个很了不起的大人物在里边呢。”
二人は帽子とオーバーコートを釘にかけ、靴をぬいでぺたぺたあるいて扉の中にはいりました。
他们俩把帽子和大衣挂在了钉子上,然后脱了鞋,吧嗒吧嗒地走了进去。
扉の裏側には、
扉の裏側には、门背面写着:
「ネクタイピン、カフスボタン、眼鏡、財布、その他金物類、
ことに尖ったものは、みんなここに置いてください」
请把钱包、领带别针、袖扣、眼镜以及其他金属物品,特别是尖硬的东西,统统放在这里。
と書いてありました。扉のすぐ横には黒塗りの立派な金庫も、ちゃんと口を開けて置いてありました。鍵まで添えてあったのです。
门边摆着一个涂着黑漆的大保险柜,柜门敞开着,而且还备了一把钥匙。
「ははあ、何かの料理に電気をつかうと見えるね。金気のものはあぶない。ことに尖ったものはあぶないと斯う云うんだろう。」
“哈哈,看来有一道菜是要用电的,所以金属类物品有危险,特别是尖锐的东西。是这个意思吧?”
「そうだろう。して見ると勘定は帰りにここで払うのだろうか。」
“是吧。这么说,走的时候,要在这里付钱啦?”
「どうもそうらしい。」“看来是这样。”
「そうだ。きっと。」“肯定是这么一回事。”
二人はめがねをはずしたり、カフスボタンをとったり、みんな金庫のなかに入れて、ぱちんと錠をかけました。两个人摘下眼镜,又取下了袖扣,然后统统放进了保险柜里,咔嚓一下上了锁。
すこし行きますとまた扉があって、その前に硝子の壺が一つありました。扉には斯う書いてありました。
没走几步,眼前又出现一扇门,门前放着一个玻璃缸。只见门上写着这样一行字:
「壺のなかのクリームを顔や手足にすっかり塗ってください。」
请用罐子里的奶油好好地涂在脸上和手脚上。
みるとたしかに壺のなかのものは牛乳のクリームでした。
他们一看,玻璃缸似的罐子里果然装的是奶油。
「クリームをぬれというのはどういうんだ。」
“为什么让我们抹奶油?”
「これはね、外がひじょうに寒いだろう。室のなかがあんまり暖いとひびがきれるから、その予防なんだ。どうも奥には、よほどえらいひとがきている。こんなとこで、案外ぼくらは、貴族とちかづきになるかも知れないよ。」
“那是因为外面太冷,而屋子里太暖和了,是让我们预防皮肤皲裂嘛。里面一定是来了一位很了不起的大人物。没准儿在这里,咱们还能结识贵族呢。”
二人は壺のクリームを、顔に塗って手に塗ってそれから靴下をぬいで足に塗りました。それでもまだ残っていましたから、それは二人ともめいめいこっそり顔へ塗るふりをしながら喰べました。
两个人用缸里的奶油涂了脸,又涂在手上,最后把袜子脱了,涂在了脚上。可奶油还有剩余,于是他们俩干脆装着往脸上抹的样子,偷偷地把剩余的奶油全舔掉了。
それから大急ぎで扉をあけますと、その裏側には、
当他们迫不及待地推开那扇门后,又见门背面写着:
「クリームをよく塗りましたか、耳にもよく塗りましたか、」
奶油涂好了吗?耳朵上也涂了吗?
と書いてあって、ちいさなクリームの壺がここにも置いてありました。
又有一只小玻璃缸摆在那里。
「そうそう、ぼくは耳には塗らなかった。あぶなく耳にひびを切らすとこだった。ここの主人はじつに用意周到だね。」
对了,我忘了涂耳朵。好险呀,差点让耳朵裂开了。这里的主人可真是想得周到呀。”
「ああ、細かいとこまでよく気がつくよ。ところでぼくは早く何か喰べたいんだが、どうも斯うどこまでも廊下じゃ仕方ないね。」
“是啊,真可谓无微不至呀!不过,我只想快点吃些东西,这没完没了的走廊,什么时候能走到头啊。”
するとすぐその前に次の戸がありました。
正说着,眼前又出现了一扇门。
「料理はもうすぐできます。
十五分とお待たせはいたしません。
すぐたべられます。
早くあなたの頭に瓶の中の香水をよく振りかけてください。」
饭菜马上就好。用不了十五分钟。马上就能吃了。请赶快将瓶中的香水洒在您的头上。
そして戸(と)の前には金ピカの香水の瓶が置いてありました。
门前摆着一个金光闪闪的香水瓶。
二人はその香水を、頭へぱちゃぱちゃ振りかけました。
两个人将瓶中的香水哗哗地洒在了头上。
ところがその香水は、どうも酢のような匂がするのでした。
谁知那香水有一股醋味儿。
「この香水はへんに酢くさい。どうしたんだろう。」
“这香水怎么有一股醋味儿?怎么回事?”
「まちがえたんだ。下女が風邪でも引いてまちがえて入れたんだ。」
“大概是弄错了。肯定是女佣感冒了,错把醋装了进去。”
二人は扉をあけて中にはいりました。两个人推门而入。
扉の裏側には、大きな字で斯う書いてありました。
门背面写着这样两行大字:
「いろいろ注文が多くてうるさかったでしょう。お気の毒でした。
もうこれだけです。どうかからだ中に、壺の中の塩をたくさん
よくもみ込んでください。」
各种要求太多,让您心烦了吧。您受委屈了。 这是最后一条了,请您用罐子里的盐把您的全身 彻底地揉一遍。
なるほど立派な青い瀬戸の塩壺は置いてありましたが、こんどというこんどは二人ともぎょっとしてお互にクリームをたくさん塗った顔を見合せました。
果然,面前摆着一个雅致的蓝色陶瓷罐,事到如今,两个人才惊愕地看清了对方那涂满奶油的脸。
「どうもおかしいぜ。」“不对劲儿呀!”
「ぼくもおかしいとおもう。」“我也觉得有点不对头。”
「沢山の注文というのは、向うがこっちへ注文してるんだよ。」“所谓的要求多,原来是向咱们提出要求啊!”
「だからさ、西洋料理店というのは、ぼくの考えるところでは、西洋料理を、来た人にたべさせるのではなくて、来た人を西洋料理にして、食べてやる家(うち)とこういうことなんだ。これは、その、つ、つ、つ、つまり、ぼ、ぼ、ぼくらが……。」がたがたがたがた、ふるえだしてもうものが言えませんでした。
“我想,这家所谓的西餐馆,不是让来的人吃西餐,而是把来的人做成西餐吃掉,就是这么回事。那也就、就、就、就是说,我、我、我们⋯⋯”这个绅士已经哆哆嗦嗦地讲不下去了。
「その、ぼ、ぼくらが、……うわあ。」がたがたがたがたふるえだして、もうものが言えませんでした。
那,咱、咱们⋯⋯哇!”另一个绅士也哆哆嗦嗦地说不出话来了。
「遁げ……。」がたがたしながら一人の紳士はうしろの戸を押そうとしましたが、どうです、戸はもう一分も動きませんでした。
“逃哇⋯⋯”一个绅士哆嗦着想去推开身后的门,谁知门却纹丝不动。
奥の方にはまだ一枚扉があって、大きなかぎ穴が二つつき、銀いろのホークとナイフの形が切りだしてあって、
里面还有一道门,门上有两个大大的钥匙孔,被刻成了银色的刀叉的形状。
「いや、わざわざご苦労です。
大へん結構にできました。
さあさあおなかにおはいりください。」
上面写着: 真是辛苦了。 你们表现不错。 来吧,请进到肚子里来吧。
と書いてありました。おまけにかぎ穴からはきょろきょろ二つの青い眼玉がこっちをのぞいています。
钥匙孔里,有两只滴溜乱转的蓝眼珠正窥视着这边。
「うわあ。」がたがたがたがた。“哇—”
「うわあ。」がたがたがたがた。“哇—”
ふたりは泣き出しました。两个人哆嗦着哭了起来。
すると戸の中では、こそこそこんなことを云っています。
这时,从门里面传出了窃窃私语声:
「だめだよ。もう気がついたよ。塩をもみこまないようだよ。」
“糟了,他们已经发觉了,根本就没把盐揉在身上。”
「あたりまえさ。親分の書きようがまずいんだ。あすこへ、いろいろ注文が多くてうるさかったでしょう、お気の毒でしたなんて、間抜けたことを書いたもんだ。」
“那还用说?都怪头儿的说明写得不高明。什么‘各种要求太多,让您心烦了’、什么‘让您受委屈了’,净写些傻话。”
「どっちでもいいよ。どうせぼくらには、骨も分けて呉れやしないんだ。」“管他呢。反正咱们连根骨头也捞不着。”
「それはそうだ。けれどももしここへあいつらがはいって来なかったら、それはぼくらの責任だぜ。」
“说得对。不过话说回来了,那两个家伙如果不进到这里来,可就是咱们的责任了。”
「呼ぼうか、呼ぼう。おい、お客さん方、早くいらっしゃい。いらっしゃい。いらっしゃい。お皿も洗ってありますし、菜っ葉ももうよく塩でもんで置きました。あとはあなたがたと、菜っ葉をうまくとりあわせて、まっ白なお皿にのせるだけです。はやくいらっしゃい。」
“叫叫他们吧,叫吧。喂,客人们,快请进,请进,请进。碟子都洗好了,菜叶也已用盐揉过了,就等你们进来和青菜一拌,再盛到雪白的碟子里了。快请进呀!”
「へい、いらっしゃい、いらっしゃい。それともサラドはお嫌いですか。そんならこれから火を起してフライにしてあげましょうか。とにかくはやくいらっしゃい。」
“嘿!请进,请进。你们是不是不喜欢色拉呀?要么就点火来油炸吧。总之,先进来吧。
二人はあんまり心を痛めたために、顔がまるでくしゃくしゃの紙屑のようになり、お互にその顔を見合せ、ぶるぶるふるえ、声もなく泣きました。
两个绅士吓得魂不附体,脸简直像是被揉皱了的废纸,两个人你看着我,我看着你,浑身发抖,都哭不出声音来了。
中ではふっふっとわらってまた叫んでいます。里屋传出来扑哧扑哧的笑声,接着,又传出了叫喊声:
「いらっしゃい、いらっしゃい。そんなに泣いては折角のクリームが流れるじゃありませんか。へい、ただいま。じきもってまいります。さあ、早くいらっしゃい。」
请进,请进。哭得那么伤心,好容易涂上去的奶油不是都被眼泪冲掉了吗?—唉,来了,马上就给您端去。—喂,你们快进来呀。
「早くいらっしゃい。親方がもうナフキンをかけて、ナイフをもって、舌なめずりして、お客さま方を待っていられます。」“快请进!我们头儿已经围好餐巾,手拿刀子,舔着嘴,正等着你们呢!”
二人は泣いて泣いて泣いて泣いて泣きました。
两个绅士哭得死去活来。
そのときうしろからいきなり、
「わん、わん、ぐゎあ。」という声がして、あの白熊のような犬が二疋、扉をつきやぶって室の中に飛び込んできました。
这时,身后冷不防传来了汪汪、汪汪的吼叫声,原来是那两条像白熊似的大狗破门而入。
鍵穴の眼玉はたちまちなくなり、犬どもはううとうなってしばらく室の中をくるくる廻っていましたが、また一声
「わん。」と高く吠えて、いきなり次の扉に飛びつきました。戸はがたりとひらき、犬どもは吸い込まれるように飛んで行きました。
钥匙孔里的眼珠子,一下子就不见了,两条狗喘息着在屋子里转了几圈,然后汪地叫了一声,便猛地冲向另外一扇门。门砰地一下被撞开了,两条狗如同被吸进去一样冲了进去。
その扉の向うのまっくらやみのなかで、
「にゃあお、くゎあ、ごろごろ。」という声がして、それからがさがさ鳴りました。
门那边漆黑一片,只听见里面传来了喵—嗷—呜—的叫声,然后又传出来一阵沙沙的声响。
室はけむりのように消え、二人は寒さにぶるぶるふるえて、草の中に立っていました。
转眼之间,房子像烟雾一样地消散了,两个绅士站在草丛中,冻得浑身发抖。
見ると、上着や靴や財布やネクタイピンは、あっちの枝にぶらさがったり、こっちの根もとにちらばったりしています。風がどうと吹いてきて、草はざわざわ、木の葉はかさかさ、木はごとんごとんと鳴りました。再朝四下里一看,原来他们的上衣、鞋子、钱包以及领带、别针,不是挂在那边的树枝上,就是丢在了这边的树底下。风一下子刮了起来,草沙沙作响,树叶哗哗啦啦,树发出了咔咔的响声。
犬がふうとうなって戻ってきました。
そしてうしろからは、
「旦那あ、旦那あ、」と叫ぶものがあります。
二人は俄かに元気がついて
「おおい、おおい、ここだぞ、早く来い。」と叫びました。
狗又吼叫着跑了回来。 跟着传来一声叫喊: “老爷!老爷!” 两个人一下子来了精神,赶快答应道:“喂,喂!我们在这里呢,快来呀。”
簔(みの)帽(ぼう)子(し)をかぶった専門の猟師が、草をざわざわ分けてやってきました。
そこで二人はやっと安心しました。
只见头戴蓑帽的当地猎人拨开草丛,跑了过来。他们俩这才松了一口气。
そして猟師のもってきた団子をたべ、途中で十円だけ山鳥を買って東京に帰りました。
他们吃了猎人带来的团子,又在路上花十元钱买了山鸟,就返回东京了。
しかし、さっき一ぺん紙くずのようになった二人の顔だけは、東京に帰っても、お湯にはいっても、もうもとのとおりになおりませんでした。
但是,即使是回到了东京,泡了热水澡,两个人那如同废纸一样皱巴巴的脸,也无法再恢复成原来的样子了。
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