21 第二十一篇

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先日の本紙で、歌人の俵万智さんが、電車内で耳にした会話を語っていた。誰かとメールのやり取りでトラブルがあったらしく、「そのときばかりは頭に来て、面と向かって電話したよ」と言っていたそうだ。 　電話では「面と向かった」ことにはなるまい。なのにそう思うほど、メールや仮想空間の浸透で、友達同士が話さずに付き合う世界が広がりつつあるのだろう。そうした中で自意識ばかり肥大すれば、寛容はますます失われないか。堪忍袋の緒が細った社会は、子供にも大人にも生きづらい。

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そんな社会から、学び舎だけが例外とはいかないらしい。「子供の暴力」に手を焼く学校の実情が、文部科学省の調べで浮かび上がった。感情を抑えられずに暴発する子が、こちらも増えている。 　机を投げる、ハサミで同級生の背中を刺す、すれ違いざまに肩がぶつかって喧嘩になる。苛立ちというガスに、他人への非寛容が導火線になって火がつくことが多いようだ。

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「堪忍のなる堪忍は誰もするならぬ堪忍するが堪忍」は、人生訓をうたう道歌の中でもよく知られている。その教えが昨今はあやうい。誰もするはずの堪忍さえできず、些細なことで堪忍袋の緒を切らす人が、世代を問わずに増えている。 　当節は「キレる」と表記される。本紙の記事には１７前に初登場し、１０年前から急に増えた。キレる人が増えたから言葉が広まるのか。言葉が広まってキレる人を誘発するのか。苛立つ空気は世を覆って、募るばかりに感じられる。