第四話01:30--06:30
神楽坂先生:はー、おはようございまーす。
生徒達:おはようございまーす。
神楽坂先生:今日は写生会です。今回の活動ですが、高校生として節度ある行動をお願いします。
生徒達:へーい。
神楽坂先生:特に相良君!分かってますね?
相良:はっ!磨かれた技能を役に立て、母校の安全を守り抜きます!
神楽坂先生:いや、あのう…節度ですよ、節度。
相良:はっ!節度ある武力で敵を殲滅します。
神楽坂先生:するなー!え…コホン…それでは、美術の水星先生からご注意があります。
水星先生:テーマは自然と人間です。環境問題が叫ばれて久しい今日ですが、我々人間の自然への関わりを諸君の若々しい感性で額縁の中に繋ぎ止めるのは大変意味あることです。仮にその「額縁」という語が負の価値を保持しうるもんとするなら、皮相的な哲学的問題、そして認知論にあえて研究するのを恐れない我々の場合にとって、これは正しく「捨てるべき梯子」と言えましょう。なぜなら、ご存知かと思いますが、いわゆる構造主義的なアプローチの限界は兼ねてから指摘されていたことで、それは…
神楽坂先生:あのう…水星先生。
水星先生:なんですか?神楽坂先生。
神楽坂先生:時間がないので、まとめの方を…
水星先生:あー、そうでした。つまり今回のテーマは自然と人間なのです。環境問題が叫ばれて久しい今日ですが、我々人間の自然への関わりを諸君の若々しい感性で…
千鳥:要するに人物と風景を一緒に描くわけね。この中から誰かモデルを一人選ぶと。
生徒A:なんだか乱暴なシステムね。
生徒B:まぁ、水星バカだし。
千鳥:で、モデルの立候補者はいる?
生徒達:…いやだよ。ずっと立っているんだろう?退屈だし、動けないし。
常盤:ね、だったら、相良君は?彼ならじっとしているの得意っぽいし。
相良:よく分からんが、俺でいいのなら志願しよう。
生徒達:おぉー。
千鳥:決まり。じゃ、ポーズを決めよう。
水星先生:うん?さて、四組はと…
千鳥:だから、一日中逆立ちさせるなんて無理に決まってるでしょう!
風間:いや、千鳥さんの言ってる逆海老反りも無理だと思うけど…
生徒C:いや。できる。為せば成る。
水星先生:君達は四組だね。モデルの生徒はもう決まったかな?
相良:はい!自分です。
水星先生:名前は?
相良:相良宗介です。
水星先生:四組、相良と…
相良:先生、自分はこうした活動は初めてです。任務遂行のため、モデルの何たるかを、ぜひご教授いただきたいのですが…
水星先生:うん!実にいい質問だ。そうした疑問を問いかけるというのは、普通の生徒にはできんことだよ、君。
相良:恐縮です。
水星先生:ケフンっ…モデルという役割は非常に重大だ。
相良:と言いますと?
水星先生:君は自然と一体化するのだ。草木の沈黙に溶け込むことで、既成概念を破壊し、偽装し、罠にかける。その行為を分かりやすく言うなら、アリストテレス的な知覚から基本的事象への分析や決定論的法則で表される『ブラインドな自然力』へと移ったことで、ヒエラルキー秩序との相関性がトポロジーにおける『樹木』として説明しうるというシステム問題によって説明できると思う…
相良:可能な限り実践します。
生徒E:違う!右だって!
千鳥:だから…じゃ、モデルはそこの木の下に座らせとくってことで。
常盤:すっごい平凡。
千鳥:宗介、その辺に座っ…あれ?宗介は?誰か知らない?
風間:さぁ、そういえば…
小野:便所にでも行ってんじゃないか?
相良:相良だ。
千鳥:宗介、早く帰ってきてよ!
相良:それはできない。
千鳥:は?
相良:俺はモデルだ。芸術のため自然に溶け込み、一体化したり、その何か偽装したりしなければならない。
千鳥:よくわかんないけど、あんたがいなくちゃ絵が描けないでしょう。
相良:いや、俺は逆説的なシンメトリとか、対戦車ミサイルとか、電波妨害ポッドとか、何かそういったものなのだ。
千鳥:あんたはモデル!ただそれだけ!
相良:とにかく絵を描け!俺はここから密かに見守っている。
千鳥:ちょっ…と…
常盤:どう?
千鳥:また何か勘違いしているみたい。ほかのモデルにしよう。
水星先生:だめだ!だめだ!だめだ!モデルの変更なの認められん!
千鳥:だってそのモデルが行方不明なんです!
水星先生:そんな口実は通用せん!私の情熱を受け止めたあのモデルを外すなどとは、何を企んでいるのか?大衆はいつもそうだ。俗悪なシミュレーショニズムを無批判に受け入れ、ただあるがままを透明に昇華することを決め付けることで、絶望に瀕した実体の死を通したつぶやきを聞こうともしない…
千鳥&常盤:は…
風間:えー?つまり、相良君以外認めないってこと?
千鳥:仕方ないよ。こうなったら、みんなで宗介を探そう!
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