そのとき少女は一すじの流れ星を見つけました。すぅっと黄色い線をえがいています。「だれかが死ぬんだ……」と、少女は思いました。
なぜなら、おばあさんが流れ星を見るといつもこう言ったからです。
人が死ぬと、流れ星が落ちて命が神さまのところへ行く、と言っていました。でも、そのなつかしいおばあさんはもういません。少女を愛してくれたたった一人の人はもう死んでいないのです。
少女はもう一度マッチをすりました。少女のまわりを光がつつみこんでいきます。前を見ると、光の中におばあさんが立っていました。明るくて、本当にそこにいるみたいでした。
むかしと同じように、おばあさんはおだやかにやさしく笑っていました。「おばあちゃん!」と、少女は大声を上げました。
「ねぇ、わたしをいっしょに連れてってくれるの?
でも……マッチがもえつきたら、おばあちゃんもどこかへ行っちゃうんでしょ。あったかいストーブや、ガチョウの丸焼き、大きくてきれいなクリスマスツリーみたいに、パッと消えちゃうんでしょ……」少女はマッチの束たばを全部だして、残らずマッチに火をつけました。そうしないとおばあさんが消えてしまうからです。
マッチの光は真昼の太陽よりも明るくなりました。
赤々ともえました。明るくなっても、おばあさんはいつもと同じでした。
昔みたいに少女をうでの中に抱きしめました。そして二人はふわっとうかび上がって、空の向こうの、ずっと遠いところにある光の中の方へ、高く高くのぼっていきました。
ふわっと:軽く柔らかい様
例:パンをふわっと焼き上げる 面包烤得松松软软的
雲がふわっと浮かんでいる
そこには寒さもはらぺこも痛いたみもありません。なぜなら、神さまがいるのですから。
朝になると、みすぼらしい服を着た少女がかべによりかかって、動かなくなっていました。
寄りかかる:倚靠
ほほは青ざめていましたが、口もとは笑っていました。おおみそかの日に、少女は寒さのため死んでしまったのです。
今日は一月一日、一年の一番初めの太陽が、一体の小さななきがらを照らしていました。少女は座ったまま、死んでかたくなっていて、その手の中に、マッチのもえかすの束がにぎりしめられていました。「この子は自分をあたためようとしたんだ……」と、人々は言いました。でも、少女がマッチでふしぎできれいなものを見たことも、おばあさんといっしょに新しい年をお祝いしに行ったことも、だれも知らないのです。だれも……
また、新しい一年が始まりました。
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