鉄のわな03

2022-01-05 07:54:3202:54 85
声音简介

怪人二十面相 鉄のわな 続き


 さて、その壮一君が、羽田空港へつくという日の早朝のことです。
 あかあかと秋の朝日がさしている、羽柴家の土蔵の中から、ひとりの少年が、姿をあらわしました。小学生の壮二君です。
 まだ朝食の用意もできない早朝ですから、邸内はひっそりと静まりかえっていました。早起きのスズメだけが、いせいよく、庭木の枝や、土蔵の屋根でさえずっています。
 その早朝、壮二君がタオルのねまき姿で、しかも両手には、何かおそろしげな、鉄製の器械のようなものをだいて、土蔵の石段を庭へおりてきたのです。いったい、どうしたというのでしょう。おどろいたのはスズメばかりではありません。
 壮二君はゆうべ、おそろしい夢をみました。「二十面相」の賊が、どこか洋館の二階の書斎へしのびいり、宝物をうばいさった夢です。
 賊は、おとうさまの居間にかけてあるお能の面のように、ぶきみに青ざめた、無表情な顔をしていました。そいつが、宝物をぬすむと、いきなり二階の窓をひらいて、まっくらな庭へとびおりたのです。
「ワッ。」といって目がさめると、それはさいわいにも夢でした。しかし、なんだか夢と同じことがおこりそうな気がしてしかたがありません。
「二十面相のやつは、きっと、あの窓から、とびおりるにちがいない。そして、庭をよこぎって逃げるにちがいない。」
 壮二君は、そんなふうに信じこんでしまいました。
「あの窓の下には花壇がある。花壇がふみあらされるだろうなあ。」

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