机の引き出しをあけて、かきまわしていたら、去年の夏の扇子が出て来た。白い紙に、元禄時代の女のひとが行儀わるく坐り崩れて、その傍に、青い酸漿《ほおずき》が二つ書き添えられて在る。この扇子から、去年の夏が、ふうと煙みたいに立ちのぼる。山形の生活、汽車の中、浴衣《ゆかた》、西瓜《すいか》、川、蝉、風鈴。急に、これを持って汽車に乗りたくなってしまう。扇子をひらく感じって、よいもの。ぱらぱら骨がほどけていって、急にふわっと軽くなる。クルクルもてあそんでいたら、お母さん帰っていらした。御機嫌がよい。
「ああ、疲れた、疲れた」といいながら、そんなに不愉快そうな顔もしていない。ひとの用事をしてあげるのがお好きなのだから仕方がない。
「なにしろ、話がややこしくて」など言いながら着物を着換えてお風呂へはいる。
お風呂から上がって、私と二人でお茶を飲みながら、へんにニコニコ笑って、お母さん何を言い出すかと思ったら、
「あなたは、こないだから『裸足《はだし》の少女』を見たい見たいと言ってたでしょう? そんなに行きたいなら、行ってもよござんす。そのかわり、今晩は、ちょっとお母さんの肩をもんで下さい。働いて行くのなら、なおさら楽しいでしょう?」
打开桌子的抽屉乱翻一气,找到了去年夏天的扇子。白纸上画着一个坐姿随便的元禄时代的女人,她的旁边还添上了两只青青的酸浆果。经由这把扇子,去年夏天的事情如烟雾般一下子冒了出来。山形的生活,列车内,浴衣,西瓜,河流,蝉,风铃。突然间很想拿着这把扇子去坐火车。打开扇子时的感觉可真好。哗啦哗啦摊开扇骨,忽然变得轻飘飘的。正滴溜溜地拎在手里玩儿呢,妈妈回来了。她心情不错。
“啊,累死了,累死了。”她这样说着,脸上却没有那么不愉快的样子。她喜欢管别人的事情,也是没办法。
“怎么说呢?事情比较麻烦。”她边说边换了衣服去洗澡。
洗完澡以后,和我一起两个人坐着喝茶,忽然奇怪地嘿嘿笑起来。我正想妈妈要说什么呢,就听她说道:“前些天你不是一直说想看《赤脚少女》吗?真那么想去的话,就去看好了。作为交换,今天晚上你给妈妈按摩一下肩膀吧。干完活儿再去看会觉得更开心,对吧?”
注:
元禄时代,江户幕府第五代将军德川纲吉统治时的盛世时代,特指元禄年间(1688—1704)前后的时代。
注:
《赤脚少女》(MarysaMaryscha),捷克斯洛伐克电影,导演是约·罗文斯基(JosefRovensky`,1870—1937),1935年上映。讲述了斯洛伐克村庄中一个少女的悲恋故事。
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