朗読 横島小次郎
内容 : 同じ箱に入れるとけんかをする、敵同士の人形。
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むかしむかし、ある人形使いが仕事の打ち合わせに行く途中、友だちの男の家に立ち寄りました。
人形使いとは、見せ物小屋などで人形劇をする人の事です。
「よう、元気か?」
「ああ、お前か。しばらくだな。どうだい、景気は?」
「ありがたい事に、それなりに忙しいよ」
「そうか。よかったら、今夜は泊まっていってくれよ」
「そうしたいが、今は仕事の打ち合わせに来ているんだ。もうそろそろ出かけないと」
「それじゃ、明日また来てくれ。それまで荷物の人形箱を預かってやるよ」
「いや、でもこれは、わしの命よりも大切な物だから???」
「それなら、なおの事だ。打ち合わせがすむまで、おれが大切に守ってやるよ」
そこまで言われると持って行くとは言えないので、人形使いは人形箱を男に渡すと出て行きました。
夜になると男は、預かった人形箱を自分の枕元に置いて寝る事にしました。
すると真夜中、男の枕元で、ガシャガシャ! ゴソゴソ! と、ネズミが暴れる様な音がしました。
男は飛び起きると、すぐに人形箱を確認しましたが、人形箱は無事です。
「よし。人形箱は無事だ」
男は安心すると、再び眠りました。
するとまた、しばらくたって、ガシャガシャ! ゴソゴソ! と、音が聞こえてきます。
しかもどうやら、その音は人形箱の中から聞こえて来るようです。
(もしかして、ネズミが人形箱に忍び込んだか? 大切な人形をネズミにかじられては一大事だ!)
男は明かりをつけると、人形箱のふたを取って中を確認しました。
幸いな事に中にネズミの入った様子はなく、たくさんの人形がきちんと並んでいます。
「やれやれ、取り越し苦労か」
安心した男は箱のふたを閉めて再び寝ようとしましたが、今度は箱の中で、ドタバタ! ドタバタ! と、何かが暴れる音がするではありませんか。
「なっ、何だ? 箱の中には、人形しかないはずなのに!」
男は気味が悪くなりましたが、それでも箱のふたを開けてみました。
すると、どうでしょう。
中に入っている侍の人形と盗賊の人形が激しくにらみあい、小さな口を開いて、お互いに噛みつこうとしているのです。
「わっ! 何だ、この人形は! こら、やめろ! やめないか!」
男は思わず二つの人形をつかむと、箱の外へと引っ張り出しました。
すると人形は死んだ様に静かになり、男がさわっても動こうとはしません。
「これは、どういう事だ?
さっきは確かに、人形がけんかをしていたよな?
カラクリ人形の様には、???見えないし。
???とにかく、この二つを一緒に入れてはまずいな」
男は二つの人形を外へ出したまま、一睡もせずに二つの人形を見張りました。
次の朝、用事を終えた人形使いが帰って来ました。
そこで男が昨日の出来事を話すと、人形使いは、ほっとした顔で言いました。
「人形を外に出したのは、良い判断だ。
あんたのおかげで、大事な人形が壊れずにすんだよ。
実はこの人形は敵同士で、一緒の箱に入れるとけんかをして、相手を粉々にしてしまうんだ。
いつもは違う箱に入れているのだが、うっかり同じ箱に入れたのを思い出して、どうなっているかと心配したんだ」
それを聞いた男は、今さらながら全身に冷や汗をかきながら尋ねました。
「では、あれはやはり、夢ではなかったのか?」
すると人形使いは、二つの人形を別の人形箱に入れながら答えました。
「ああ、人形という奴は、長く使うと魂が宿るからな。
人形劇ではこの人形たちは敵同士だから、同じ箱に入れるといつもけんかをしているよ。
人形使いなら、これくらいは誰でも経験する事さ」
「??????」
それからも人形使いは男の家に何度も遊びに来ましたが、男は二度と人形を預かろうとはしませんでした。
おしまい
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桃之夭夭_0e3
感谢
阿阳err
感谢,有字幕