朗読 横島小次郎
内容 : 髪の毛が邪魔で成仏出来ない幽霊が、お坊さんにお願いを。
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むかしむかし、越後の国(えちごのくに→新潟県)の関山(せきやま)という村に魚野川(うおのがわ)という川があって、この川にはいつも仮ごしらえの橋がかかっていました。
なぜ仮ごしらえかというと、この川は流れが早いので、ちょっと大雨が降っただけでも橋が流されてしまうからです。
それでいつも、仮ごしらえの橋がかかっているのでした。
でも仮ごしらえの橋では足元が悪く、冬の寒い日などは橋が凍ってしまうため、足を滑らせて川に落ちた人が毎年何人も命を落としていたのです。
この関山村のはずれに、六十才を越える源教(げんきょう)というお坊さんがいました。
源教は寒行(かんぎょう→寒さをしのんでする修行)として、毎晩、念仏を唱えて鐘をチンチンと打ち鳴らしては村をまわります。
そしてその帰り道は必ず魚野川の橋のたもとに立って念仏を唱え、川でおばれた人たちの成仏を願うのです。
ある夜、源教が橋のたもとで念仏を唱えていると、急に雲が出てきて月の明かりを隠してしまいました。
(はて、何やらあやしい気配がするぞ)
そう思いながらも念仏を続けていると、川の中から青い炎がめらめらと燃え上がってきたのです。
(なんと! おぼれ死んだ者の魂であろうか?)
源教は念仏に合わせて、鐘を鳴らし続けました。
そしてふと橋を見ると、いつの間にか橋の上に女の人が立っていたのです。
女の人は三十才くらいで、青ざめた顔に長い黒髪で、腰から下はボーッとかすんで見えません。
(これは、この橋で命を落とした人の幽霊に違いない)
女の幽霊は、すーっと源教の前に近寄ると、細い声をふるわせて言いました。
「わたくしは、隣村のキクと申す者でございます。
夫にも子にも先立たれ、ただ一人、後に残されてしまいました。
女の一人身では暮らしも立たず、知り合いを頼っていく途中、この橋から落ちておぼれてしまったのです。
人知れず死んだわたしには、誰からもひとすくいの水もたむけてはもらえず、世に捨てられた悲しさに毎日泣きくずれておりました。
しかし今夜は四十九日目(→死んでから四十九日目に、閻魔大王が地獄行きか天国行きかを決めると言われています)で、ちょうどあなたさまのありがたいお念仏もあり、
『ああ、これでやっと成仏できる』
と、思いましたが、何とわたしのこの黒髪が成仏の邪魔をして、まだ人の世をさまよっております」
幽霊はそう言うと顔にそでを押し当てて、さめざめと泣き出しました。
「さようであったか。
ではわたしが、その黒髪をそってしんぜよう。
明日の夜、わたしの住む関山(せきやま)いおり(→そまつで小さな家)へきなさるがよい」
その言葉を聞くと女の幽霊は小さく頷き、そしてスーと消えました。
次の日。
源教は友だちの紺屋七兵衛(こんやしちべえ)を呼びました。
そして、昨日の幽霊の話しをして言いました。
「のう、七兵衛どの。
おキクさんは、今夜必ず来るだろう。
あの様な幽霊は、決して約束をたがえぬからな。
そしてこれを機会に、あの橋が危険である事を皆に知らせたい。
だが証拠がのうては、幽霊などと言っても誰も信じてはくれぬ。
そこで七兵衛どのに、頼みがあるのじゃ。
七兵衛どのは、村でも評判の正直者。
どうか幽霊が約束通り現れた事の証人に、なってはくれまいか」
「はい、承知しました。わたしはどこかに隠れて、その幽霊を見届ける事にいたしましょう」
「うむ、頼むぞ」
その夜、源教は新しいむしろを仏壇の前にしいて、幽霊が座る場所を作りました。
そして七兵衛を、仏壇の下の戸だなに隠しました。
「うむ、遅いなあ」
もう真夜中ですが、幽霊の現れる様子はありません。
源教は、いつの間にか、いねむりをはじめましたが、突然、ぞくぞくっと寒気を感じて目を覚ましました。
(おおっ!)
目を開けると、いつの間にかおキクの幽霊が来ていて、仏壇に向かって頭をたれ、むしろの上にきちんと正座をしています。
源教は気持ちを落ち着かせると、おキクの幽霊に声を掛けました。
「おキクどの。よく、おいでくだされた」
「??????」
おキクは黙って、頷くだけです。
「では、はじめるぞ」
源教は立ちあがって手をゆすぐと、小さなたらいに水をくんできました。
そしてかみそりを持つと、おキクのそばへ近寄ります。
肩ごしにたれたおキクの長い黒髪は、びっしょりと、むしろをぬらしていました。
手にとると、しずくがたれます。
(このぬれた黒髪が、成仏の邪魔をしておるのじゃな。だが、それも今夜で終わりじゃ)
源教は、おキクの髪をそりながら、ふと、こんな事を思いました。
(この髪の毛を少しとっておけば、幽霊が来た証拠になるのでは)
しかし源教が髪の毛をそると、不思議な事にそり落とすあとからあとから髪の毛はおキクのふところの中へ入っていくのです。
まるで見えない糸でもついていて、引っ張っているようです。
(このままでは、証拠が残らぬ)
源教は自分の指に髪の毛をしっかりからめてから、そりはじめました。
それでもそり落とした髪の毛は指の間をすり抜けると、おキクのふところへと入っていきます。
ただの一本も、源教の手には残りません。
やがて頭をそり終えると、おキクは源教の方を向いて、やせ細った白い手を静かに合わせておがみました。
「???ありがとうございました。これで成仏できます」
おキクは小さくつぶやくと、おがんだ姿のままスーと消えてしまいました。
おキクが消えた後、七兵衛が戸だなから出てきました。
そして源教の前へ、にぎった左手を差し出しました。
「源教さま、これを」
見てみると七兵衛の手の中には、幽霊のぬれた髪の毛が、ほんの少しだけ残っています。
「おおっ、残っておったか。わずかでも証拠があれば、皆に橋が危険である事を伝えられる」
源教が幽霊の髪の毛を受け取ると、七兵衛が言いました。
「源教さま、わたしはこれまで、幽霊などは迷信と思っていました。
しかし今夜幽霊に出会い、死んでからの世界がある事を知りました。
これからの人生は、神仏に捧げたいと思います」
「うむ。それならわたしも、出来る限りの事をさせてもらおう」
その後、 七兵衛は出家(しゅっけ→家を出て仏門に入る事)すると、お坊さんになりました。
そして源教は関山に塚(つか)を建てると、幽霊の髪の毛を納めて橋の危険をみんなに知らせました。
その塚は毛塚(けづか)と呼ばれ、いまでも残されているそうです。
おしまい
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云胡不疑
内容:因为头发不能成佛的幽灵,请求和尚超度。 很久很久以前,越后国(新泻县)的一个叫关山的村子里有一条叫鱼野川的河,这条河上有座临时搭建的桥。这条河流速很快,稍微下点大雨就会把桥冲走。因此,桥总得临时搭建,但临时的桥脚下不舒服,冬天冷的时候桥会结冰,所以每年都有很多人失足掉进河里丧命。 在关山村的尽头,有一位年过六十岁的源教和尚,源教作寒行(抵御寒冷的修行),每天晚上念佛,敲钟,绕村子一周。回去的路上一定会站在鱼野川的桥头念佛,祈祷在河中丧生的人能够成佛。
云胡不疑
一天夜里,源教在桥头念佛时,突然乌云密布,遮住了月光。(嗯,好像有什么可疑的迹象。) 一边念着佛一边想,河中有蓝色火焰熊熊燃烧起来了。 (天哪!是溺死者的灵魂吗?) 源教继续念佛敲钟,然后忽然看到桥上不知什么时候站着一个女人,这女子大约三十岁,脸色铁青,一头长长的黑发,腰部以下模糊不清。 (这一定是在这座桥上丧命之人的幽灵。) 女幽灵嗖的一声走到源教面前,颤抖着小声说: “我是邻村的人。 丈夫和孩子都先后离开了,只剩我孤身一个女人无法生活,在去找熟人的途中,从这座桥上掉了下来,淹死了。 悄无声息死去的我,没有人给一杯水的供奉,每天都在悲伤哭泣被这世间遗弃。
云胡不疑
但今晚是第四十九天(据说死后的第四十九天,阎罗王会决定是去地狱还是去天堂),正好有您在念佛:“往生成佛。” 可我的黑发竟然妨碍成佛,还在人间流浪。”幽灵说完,把袖子贴在脸上,潸然泪下。 “是这样吗?那我来把她的黑发剃掉吧。明天晚上,到我住的关山下(小房子)去。” 听到这句话,女幽灵微微点头,然后消失了。 第二天,源教叫来朋友绀屋七兵卫说了昨天的幽灵的故事。 “七兵卫,那位小姐今晚一定会来的,幽灵绝对会守信的。我想借此机会告诉大家那座桥很危险,但是如果没有证据,即使说是幽灵,也没有人相信。所以我要拜托你件事,七兵卫在村子里也是有名的老实人。 希望你能成为幽灵按约定出现的证人。”
云胡不疑
“好的,我知道了,我要躲在某个地方看着那幽灵。” “嗯,拜托了。”那天晚上,源教在佛龛前新设了一个幽灵坐的地方,然后把七兵卫藏在佛龛下的门里。 “真慢啊。” 虽然已经是深夜了,但是没有幽灵出现。源教不知什么时候,突然感到一阵寒意,睁开了眼睛。 (嗐!) 睁开眼,不知什么时候,女幽灵来了,面向佛龛低着头,跪坐在那里。源教平静下来,向女幽灵搭话。 “你来了。” “……” 女子默默点头。 “那么,开始吧。” 源教站起来,一扬手把水倒进小盆里,然后拿起剃刀,靠近她的旁边。垂着肩的女子有长长的黑发,浑身湿透,觉得舒服多了,水顺着手滴下来。
云胡不疑
(这湿漉漉的黑发妨碍了成佛啊,要在今晚结束了。) 源教在剃她的头发的时候这样想 (把这长发留一点,会不会成为幽灵来的证据?) 但是不可思议的是,源教剃掉的头发就会进入女子的口袋里,就好像有一根看不见的线拉着。 (照这样下去,证据留不下来) 源教把头发紧紧缠绕在自己的手指上拉着,即便如此,剃掉的头发还是会从手指间穿过,然后进入幽灵的口袋,一根也不会留在源教的手上。过了一会儿,女子抬起头来,面向源教,清瘦白净的手静静地合在一起,蹲了下来。 “谢谢。这样就可以成佛了。” 她小声嘟囔了一句,就嗖地消失了。