17课

1372253phos

　しかし、長期の治療は患者だけでなく、近くにいて看護をする者の人生も大きな変化をもたらす。経済的問題は言うまでもなく、患者を世話するために仕事を変わり、時には自分は病院の世話になることさえある、親兄弟が以前の生活に戻れるのならいいが、先が見えない治療のために、家族も犠牲を払う医療のあり方はそれでいいのだろうか。 　一つの命を生かすと言うことは、さらに人が生きると言うことは、どういうことなのか。今、真剣に問い直さなければならない問題である。

1372253phos

少しでも長く命を生かそうするだけの治療も少なくない、健康な状態に戻ることが無理だと分かっていながら、一分でも長生きさせるために、薬や器具の助けを借りる治療、それが、様々な問題を引き起こしている。 　医療が目指すべきは、いかに長く生かすではなく、健康に生きることができる時間をいかに伸ばすかということ、それが重要なのだ。寝たきりで自分の意思で体を動かすこともできないようでは、生きているとは言えないという考え方がある。しかし、その一方で、血を分けた人間からすると、そう簡単に割り切るわけにはいかない、「もしかして」と祈るような思いで「治療を続けて」と願うのは、当然だと意見もある。

1372253phos

治す(命) 　「少しでも長生きを」という願いを叶えるために、医療は目覚ましい進歩を遂げてきた、生まれてすぐに失われていた多くの命が救われ、昔なら助からなかった病気が治せるようになった、医療の進歩は世界の平均寿命の伸びから見ても、明らかである。しかし、平均寿命が伸びると同時に、社会の高齢者化も進み、それと共に、「生きるは」と問い直さざるを得ない厳しい状況も生み出されている。 　医療とは、本来患者の苦しみを和らげ、もう一度健康で元と変わらぬ生活ができるようにすることを目指すべきである。ところが、今、いわゆる植物状態の患者への治療にみられるように、